ARCHICAD BIM事例レポート 栗林賢次建築研究所

佛眼寺 佛眼寺

ARCHICAD を核に新人を即戦力に育成
若者が育つ&活躍するアトリエ事務所へ

大阪市の栗林賢次建築研究所は、建築家 栗林賢次氏が主宰する建築設計事務所である。設立 以来20年余の歴史を持つ同建築研究所は、その長い歴史のほとんどを栗林氏とアシスタント1名によるアトリエ事務所スタイルで運営してきた。しかし現在地に移転後、わずか2年余で新たに所員3名が加わり、住宅分野を中心にこれまでにない活発な活動を開始しているその原動力となっているのが、事務所移転と同時に導入したARCHICAD の活用である。その導入背景と活用法について、栗林所長と所員の皆さんに伺った。

栗林賢次建築研究所 代表/一級建築士 栗林賢次 氏

栗林賢次建築研究所
代表/一級建築士
栗林賢次 氏

左近充 翼 氏

栗林賢次建築研究所
左近充 翼 氏

池田 翔 氏

栗林賢次建築研究所
池田 翔 氏

佐野 翼 氏

栗林賢次建築研究所
佐野 翼 氏

入社2カ月の新人が ARCHICAD を駆使して自力で作りあげた寺の 3D モデル

「以前は心斎橋で、アシスタントと2人の事務所をやっていました。そのアシスタントの独立を機に一から出直そうと移転を決め、同時に導入したのがARCHICAD です。2012年の10月のことでした」。そう語るのは代表の栗林氏である。同氏は別の2DCAD で設計業務を行なってきたが、移転を機にBIM を導入し業務改革を図ろうと考えた。早くから情報収集に励んでいた同氏は、BIM が次代の建築設計のキーワードだと確信していたのである。

「ARCHICAD を選んだのは、ワールドワイドな実績が豊富で、世界的デファクトになるツールと感じたからです。スタッフも入れようと思っていたので、2セット導入しました」。栗林氏がユニークだったのは、この時あえて新卒学生を採用した点だろう。大企業なら時間をかけて新卒からじっくり育てられるが、小規模のアトリエ事務所ではそこまで余裕がないことが多い。しかも近年、アトリエ事務所への就職活動が減少し、学生の多くはゼネコンやハウスメーカーを選ぶことが多い。結果、アトリエ事務所は即戦力を求めて経験者を募集することが増えていたのである。しかし栗林氏はその道を選ばなかった。

「ウチも決して余裕があるわけではありません。でもBIM という新しい手法に挑む以上、多少手間をかけても、クセが付いてないまっさらな新人から育てたかったのです」。そんな思いから新卒を募集した栗林氏は、翌年4月、狙い通り新卒だった池田氏を迎えた。ところが同氏の狙いは、実に意外な形で裏切られることになった。

「彼が入社してすぐ、大きなお寺の改築案件を任されたんです。で、せっかくだから改築前の元の建物と改築案をARCHICAD で立ち上げてみようと思い、試しに池田君に“とりあえずやってみろ”といって渡したんです」。むろん不明箇所に関する質問には答え、実際に寺へ行って写真を撮ってこさせたりもしたが、学生時代 2DCAD を使っていたという池田氏にとって、初めてのARCHICAD は決して低いハードルではないだろう、と栗林氏も思っていた。

「ところが、です。何も教えてないはずなのに、彼は自分で電話サポートに質問しながら何とか立ち上げてしまったんですよ。未経験の新人が自力でお寺の3D モデルを……。正直びっくりしましたね。そして思ったんです。ARCHICADのサポートがあれば、何も知らない新卒の新人も即戦力になり得るのではないか、と」。

佛眼寺:入社 2 カ月で作成した 3D モデル 佛眼寺:入社 2 カ月で作成した 3D モデル
佛眼寺:3D 断面モデル 佛眼寺:3D 断面モデル

新卒の新人を即戦力に変えるカギ

「学生時代は2次元CAD を使っていたし、ARCHICAD は存在すら知らなかったんです」。そういって池田氏は苦笑いを浮かべる。「先生から貰ったのは平面図に立面・断面図。もちろん質問すれば何でも教えてくれましたが、初めてのARCHICAD の操作は電話サポートに頼るしかなくて……電話をかけまくりました」。もちろん手探りで試行錯誤の連続だったが、実務経験のない新人が、寺社という難度の高いプロジェクトを、初めて触れたARCHICAD でモデリングしたのである。これを見て、栗林氏はさらに大きな試練を与えようと考えた。

「ある小さな物件の依頼があったので、思いきって池田君に任せたんです。むろん方向性は示しましたが、実務はほぼ完全に彼に預けました。するとやるんですよ。これが」と、またも栗林氏は驚き顔になる。その戸惑いを確信に変えたのが、池田氏に続き翌年4月に入社した佐野氏だった。

「佐野君もやはり3DCAD 未経験の新卒でしたが、同じように小さな事務所物件を任せてみたんです。僕が書いた図面類を渡して、申請から実施図まで全部やってみろと。すると彼も悪戦苦闘しながらもやりきってしまった。本当に凄いです」。

「とにかく最初は、3D 化への対処だけでいっぱいいっぱいでした」と佐野氏は当時を回想する。「それがARCHICAD の操作に慣れていくうち、ある瞬間ふっと世界が変わったんです。少しだけ建築というものが視えて、楽しくなってきたんですね」。

栗林氏の常識では、新人が物件をトータルに任されるには3〜5年かかるものだった。ところが池田・佐野氏は入社後すぐ任され、任されることで成長した。その飛躍のカギがARCHICAD だったのである。

実施設計レベルまで ARCHICAD を駆使した物件例

O邸 O邸
テナントビル テナントビル
U邸 U邸

若者がより力を発揮できる環境を

「若い彼らがなぜあんなに早くできたのか?その答えは、逆に “なぜ自分たちはそれができなかったのか”にありました。思い出してみると、私たちの若い頃は、所長が描いたスケッチを、まず頭の中で3次元の建物に翻訳することから始めたんですよね」(栗林氏)。そうして脳内に3D 建築を建てたら、次はこれを再度2次元に翻訳し図面を描く。この「2D→3D→2D」の翻訳と作図には高度なテクニックが必要で、しかもそれは施主に確実に伝わるレベルの洗練も求められた。結果、その修得には3〜5年の長い時間が必要だったのである。

「ARCHICAD を使えば、こうした2D/3D間の翻訳も、伝わる見せ方も、全て代行してくれる。私が時間をかけて学んだ技術は不要で、見て確認しながら積み木を積むようにして建てられます。しかも構造や部材も見て分かるので、建築そのものの理解も早い。だからこそ新卒の新人も無理なく即戦力になるのです」(栗林氏)。

その後、同事務所は他社に勤務していた設計者の左近充氏を招き、全4名の体制を確立した。左近充氏は26歳の若手ながら多くの事務所での勤務経験を持ち、若手社員のまとめ役的存在を期待されている。

「実は私も2DCAD しか経験がなく最初はかなり戸惑いましたが、池田君たちに聞きながら取組んで、わりとすぐ使えるようになりました。今はレイヤの使い方などARCHICADの運用スタイルを整備しようと皆で話しあっています」。(左近充氏)。

このように若手主体の運用体制を基盤に、栗林事務所はアトリエ事務所として新たな1歩を踏み出している。全所員が個別に担当を持ち、所長の指揮のもとアイデアを出し合いながらARCHICAD でプランをまとめ、BIMxで提案し打合せて、申請から実施、現場まで責任を持って進めているのだ。これほど若手が力を発揮できる環境は大手企業でもそう多くないだろう。

「私は若い人をどんどん入れて育てたいんです。彼らが独立しても、大きな仕事の時は、ARCHICAD のチームワーク機能で結びチームとして取組めるでしょう。アトリエ事務所がめざすべき道はここだ、と確信しています」(栗林氏)。

Corporate Profile
栗林賢次建築研究所
設立 1992年
代表者 栗林賢次
所在地 大阪市中央区
事業内容 一級建築士事務所
webサイト http://www.kuribayashi-ao.com/