ARCHICAD BIM事例レポート
株式会社エスエヌジーデザイン

「しまちゅらら」外観 「しまちゅらら」外観

BIM をフル活用し独自の構造デザインでつくる
「スーパーモデルのような骨格」を持つ建築

沖縄県名護市のエスエヌジーデザインは、建築家末松信吾氏が主宰する一級建築士事務所である。沖縄を中心に住宅や商店建築、公共建築など、多彩な物件に取組む末松氏は、構造設計の技術を活かした構造デザインを得意とする建築家だ。確かな技術に裏付けられ、大胆かつユニークなアイデアにあふれた作品群は内外から高く評価されている。そんな末松氏が近年特に力を入れているのが、ARCHICAD を核にしたBIM の活用である。そんな末松氏に建築家にとってのBIM のメリットについて伺った。

株式会社エスエヌジーデザイン 代表取締役 末松 信吾 氏

株式会社エスエヌジーデザイン
代表取締役
末松 信吾 氏

スーパーモデルのような建物を作るために

「建築家として私のスタイルは、分かりやすくいえば “スーパーモデル” のような建物を作るということですね」。そういって末松氏は笑顔を浮かべる。どういうことですか?と問うと、その笑顔はさらに大きくなった。

「スーパーモデルが着るような服って、普通の人はなかなか着こなせませんよね。でも、一般の人が着るような服でも、スーパーモデルが着ればカッコよく見えます。スーパーモデル自身のフォルムの美しさがそれを可能にしているのです。建物でいえば構造から生まれる構造美――とでも言いましょうか、それがとても重要なのです」。末松氏自身が「構造デザイン」と呼ぶ、この独自のコンセプトの背景には、構造家として建築界でのキャリアをスタートした同氏ならではの発想と技術・ノウハウの蓄積がある。

「構造的に必要な場所に柱を配置するのは当然ですが、逆に意匠的に無くしたい柱は、構造家の技術で大胆に消していく。空間として邪魔にならない構造や機能美を表現していくことで、構造美を実現していくわけです」。他にあまり例のない手法だけに、地元・名護でもなかなか最初は受け入れられなかったというが、少しずつ実績を積み重ねるうち、顧客も徐々に末松氏の提唱する「構造美」を理解し、認識していった。“邪魔くさいが仕方ない柱”、“我慢するしかない不細工な出っ張り”が、末松氏の作る建物にはない。なぜあんなにすっきり建てられるのか?大胆なデザインが可能なのか?―― 末松氏の作品を見てそう感じる人が増え、いつしか多くの依頼が来るようになっていった。

「最初は住宅でしたが今は公共建築物もやりますし、最近は店舗も増えてきてインテリアまで含めて一任される物件も多くなりました。家具も“構造” ですからね」。当然、意匠から構造までトータルに行うため、通常の建築事務所より手間がかかるのは当然だろう。現在オフィスには他に2人の技術者がおり、3人体制でプロジェクトを請負っているが、それでも依頼に応えきれず、新規案件は、待ってもらっているのが現実だ。それだけに、設計品質はもちろんトータルな作業効率の向上も末松氏にとって常に大きなテーマだった。そして、その高い品質と作業効率を両立させる切り札となった1つが、ARCHICAD を核とするBIM の実現だったのである。

「そこまでして見たい海」外観 「そこまでして見たい海」外観
「そこまでして見たい海」内観 「そこまでして見たい海」内観
「そこまでして見たい海」BIMxデータ 「そこまでして見たい海」BIMxデータ

BIM の導入を断念した過去

「でも、実は私は以前BIM の導入に失敗しているのです」。そういって苦笑いする末松氏が初めてBIM に取組んだのは2010年頃のことだった。当時末松氏は別の2D/3DCAD ユーザだったが、これがBIM対応したため早速チャレンジしたのだという。

「公共建築物の計画で3D モデルを作るなどしてBIM を運用しましたが、どうも上手くいかなくて。それでも1〜2年頑張りましたが、あまりに効率が悪く断念せざるを得ませんでした」。彼らが直面したトラブルの多くは、実はその2D/3DCAD に起因していた。制作した3D モデルから2次元図面に落し込むだけで多数の不都合が発生。タッチアップに膨大な手間がかかってしまったのである。BIM の運用にCAD の機能が追いついてないのは明らかだった。

「まだ早すぎると感じた一方で、BIM 自体は非常に魅力的で何とか活用したかった。そんな時知ったのがARCHICAD でした」。実は末松氏は熱心なMac ユーザで、前述の2D/3D CAD もMac 上で動作するから使っていた。ところが、この時初めてMac上でも動くARCHICAD を知ったのである。

「最初は興味本位で体験版に触れ、セミナーでデモンストレーションを見たのですが……衝撃でした。以前感じていたストレスがほぼ全て解決され、例の図面化時のタッチアップも必要ない。完全にモデリングに集中できる。まさに雲泥の差でした」。

「C4(シーフォー)」BIMxデータ 「C4(シーフォー)」BIMxデータ
「LLOTA」外観 「LLOTA」外観
「屋根だけの家」外観 「屋根だけの家」外観

「新しいこと」への挑戦に不可欠のツール

こうした経緯を経て、末松氏は一挙に5台ものARCHICAD を導入。約1カ月の準備期間を経て全社一斉にARCHICAD へ切り替えた。

「中途半端に都合の良い所で……なんていっていたら収集がつかなくなります。私が下準備してルールを決め、一斉に切り替えました。前の CAD は全面禁止したせいか、みんな1週間ほどでARCHICAD を覚えてくれましたね」。強引なARCHICAD導入策だったが、その導入効果は想像以上だった。特に基本設計の段階でいち早く数量を拾い出し、概算見積りが出せるようになったことは、非常に大きかった、と末松氏は言う。

「以前は金額を聞かれると“坪単価これくらいで、これくらいの大きさです”等と応えることが多かったのですが、実際は当社の建物は坪単価で計りきれないことが多く、坪単価だと高すぎたり安すぎたりして困ることが多かったのです。今は基本設計の段階で、素早く拾って容易に概算できるのです」。つまり細かい図面を描く前に、お客様にざっくり“どれくらいかかる”と言えるのである。構造デザインを活かしたユニークな意匠も多数手がける末松氏だからこそ、早い段階でコスト面の確認を得ることはきわめて重要だ。そして、このことはプランや設計の内容そのものにも共通する。早い段階で3D モデル化し、ビジュアルに目で見て分かる形で検証、提案することにより、大胆な設計意図も確実に理解できる形にして施主に伝えられるようになったのである。

「たとえば、“ある海に面した崖上の住宅の計画で、海が見たいのに間に平屋の建物があって見えない”という施主がいました。だから屋上に上がれるように、と要望されましたが、それなら平屋ごと持ち上げて2階に住みませんか、と提案したのです」。末松氏らしい大胆な発想だが、どれだけ持ち上げれば海がどう見えるか。1階部分の配管はどう配置すれば煩くないか等々、ARCHICAD でビジュアルに検証して最適な解を導き出し、BIMx も駆使して提案することで施主の積極的な同意を得たのだ。

「お客様が想像しきれないからこそ、リアルに見せる必要があるわけで、それがARCHICAD によるBIM なのです。新しいことをやろうとすればするほど欠かせないのです。今後は流体解析やVR の活用に興味があるし、ARCHICAD にはそういうツールとの連携にも期待したいですね!」

Corporate Profile
株式会社エスエヌジーデザイン
創業 2001 年(2016年に法人化)
所在地 沖縄県名護市
代表 末松 信吾(一級建築士、構造設計一級建築士、一級建築施工管理技士)
事業内容 一級建築士事務所
webサイト http://sng-design.com